定時退社の主任には秘密がある
8話(1/2)
本当に風邪をひいてしまうなんて思わなかった。三十八度を指す体温計を眺め、柚亜はため息をつく。会社に連絡は入れ、プレゼン準備のこともあるので東海林にも連絡は入れた。寝て起きたら時刻は定時を過ぎた。東海林はもうゲームの中にいるだろうか。
(というか朝から何も食べてない……食料頼んだ叔母さんからは返信ないし、薬飲まなきゃだから何か口に入れなきゃ……)
買いに行く体力はない。近くに住んでいる仲良しの叔母に買い出しのお願いをしたのだが、いつもすぐに返信をくれる叔母から連絡がない。変に思いつつ、忙しいのだろうと判断した。中華粥でも出前しようかと悩んでいるとLINEの通知が入る。送り主は東海林だった。
(主任だ、どうしたんだろう。ーーえっ⁉︎)
メッセージを開いて、思わず手を滑らせスマートフォンを顔面に落としてしまう。
もう一度画面を確かめると、そこにはこう書かれていた。
『今から食料届けに行って良いですか?』
いきなりなんだ、とその一つ前の吹き出しを見る。柚亜は熱が一気に下がる思いをした。
『ごめん、熱出て食べるものないので何か買ってきてください』
叔母に送ったはずの文を東海林に誤爆していたらしい。柚亜は直ぐに訂正の文章を打つ。
『すみません! 誤爆です!』
リアルタイムでスマートフォンを見ているのか直ぐに既読が付く。返信も直ぐだった。
『食料はあるんですか?』
『出前とります』
『今外大雨だから出前時間かかります。というかもう食料買っちゃいました』
確かに締め切った窓からでも微かに静かな雨音がする。また通知音が部屋に響いた。
『明日には出勤して欲しいのでちゃんとご飯食べて寝てください』
『でも申し訳ないです』
『部下の体調管理も業務の一環ですから気にしないで』
観念して住所を送る。二十分ほどで到着すると連絡が来た。軽くメイク、いや、少しでもまともな姿で出迎えたくて起きあがろうとしてもフラフラして力が入らない。ボーっとしているとインターホンが鳴った。
よろけながら受話器を取る。
「はい」
『東海林です』
ああ、開けなきゃ。そう壁にぶつかりながら玄関に向かい、鍵を開けるとドアノブを押した瞬間前に倒れ込んでしまう。
「おっと」
片手で軽々と受け止めてくれたのは東海林だった。空いてる方の腕にはビニール袋を下げて、革靴でドアが閉まらないように止めている。
「中村さん、平気ですか」
「はい……」
「ダメですね、すみません。ちょっと抱えます」
ふわりと身体が宙に浮いた感覚がする。そこで意識は途切れた。
(というか朝から何も食べてない……食料頼んだ叔母さんからは返信ないし、薬飲まなきゃだから何か口に入れなきゃ……)
買いに行く体力はない。近くに住んでいる仲良しの叔母に買い出しのお願いをしたのだが、いつもすぐに返信をくれる叔母から連絡がない。変に思いつつ、忙しいのだろうと判断した。中華粥でも出前しようかと悩んでいるとLINEの通知が入る。送り主は東海林だった。
(主任だ、どうしたんだろう。ーーえっ⁉︎)
メッセージを開いて、思わず手を滑らせスマートフォンを顔面に落としてしまう。
もう一度画面を確かめると、そこにはこう書かれていた。
『今から食料届けに行って良いですか?』
いきなりなんだ、とその一つ前の吹き出しを見る。柚亜は熱が一気に下がる思いをした。
『ごめん、熱出て食べるものないので何か買ってきてください』
叔母に送ったはずの文を東海林に誤爆していたらしい。柚亜は直ぐに訂正の文章を打つ。
『すみません! 誤爆です!』
リアルタイムでスマートフォンを見ているのか直ぐに既読が付く。返信も直ぐだった。
『食料はあるんですか?』
『出前とります』
『今外大雨だから出前時間かかります。というかもう食料買っちゃいました』
確かに締め切った窓からでも微かに静かな雨音がする。また通知音が部屋に響いた。
『明日には出勤して欲しいのでちゃんとご飯食べて寝てください』
『でも申し訳ないです』
『部下の体調管理も業務の一環ですから気にしないで』
観念して住所を送る。二十分ほどで到着すると連絡が来た。軽くメイク、いや、少しでもまともな姿で出迎えたくて起きあがろうとしてもフラフラして力が入らない。ボーっとしているとインターホンが鳴った。
よろけながら受話器を取る。
「はい」
『東海林です』
ああ、開けなきゃ。そう壁にぶつかりながら玄関に向かい、鍵を開けるとドアノブを押した瞬間前に倒れ込んでしまう。
「おっと」
片手で軽々と受け止めてくれたのは東海林だった。空いてる方の腕にはビニール袋を下げて、革靴でドアが閉まらないように止めている。
「中村さん、平気ですか」
「はい……」
「ダメですね、すみません。ちょっと抱えます」
ふわりと身体が宙に浮いた感覚がする。そこで意識は途切れた。