Starry Flight, I Will Remember You
通路を歩きながら、私は笑顔を崩さないように努めた。

飲み物の補充、シートベルトの確認、乗客への声かけ――

どれも日常の業務。

けれど、背中に突き刺さるような視線を感じていた。

振り返ることはできない。

客室乗務員として、私情を挟むことは許されない。

それでも、その視線は確かに私を追っていた。

まるで、過去の記憶が形を持って、今この瞬間に蘇っているかのように。

「有希さんー」

同僚の声に応じながら、私は笑顔を作り続ける。

プロとしての顔を保ちながらも、心の奥では彼の瞳を思い浮かべていた。

あのとき、彼が言いかけた言葉。

それが何だったのか、想像するだけで胸が締め付けられる。

――もし、あのとき呼ばれなければ。 彼は何を言おうとしていたのだろう。

その問いが、仕事の合間に何度も胸を叩いた。

客室の安全を守る私たちにとって、恋心は邪魔者。

それなのに、彼の視線は私の心を揺らし続ける。

通路を歩くたびに、背中に熱が宿る。

長いフライトの時間が、仕事と記憶の狭間で、静かに流れていった。
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop