五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした
第15話 傷ついた五人
海斗が追跡を終えて屋敷に戻ると、
玄関前には兄弟たちが集まっていた。
「……ただいま戻りました」
その声にまっさきに反応したのは陽太だった。
腕に包帯が巻かれている。
「海斗! 大丈夫だったか!」
「陽太……その腕は?」
「ちょっと擦りむいただけだって。蒼真が手当てしてくれた」
横を見ると、蒼真の手の甲にもかすり傷がある。
しかし本人は淡々としていた。
「侵入者、二階の窓に触った形跡あり。
安全確認したから……もう、大丈夫」
律が静かに頷く。
「内部の安全は確保しました。あやめさんは……無事に休んでいますよ」
優真が胸に手を当てて、ほっと息を吐いた。
「怖がってたから……海斗が戻って来てくれて、絶対安心するよ」
海斗は全員の表情を一つずつ確認し、
深く、静かに頭を下げた。
「……すまない。
私が追跡に出たことで、皆に負担をかけた」
陽太はむっとして言い返す。
「何言ってんだよ! 海斗だけに背負わせる気なんかねぇよ!」
優真もうなずく。
「そうだよ〜。五人で守るんだもん」
蒼真も短く言った。
「海斗の判断は、正しい」
律は柔らかい笑みを浮かべた。
「ええ。僕たちは海斗を信じています」
海斗は静かに頷いた。
「侵入者は逃げましたが、あやめお嬢様には我々がついてると
示すことができ、ひとまず……危険は遠ざかりました」
その言葉に四人が一斉に息をつき、
緊張がふっと緩む。
あやめの部屋へ
海斗はそっとあやめの部屋のドアをノックした。
「朝比奈様……入っても?」
中で布団にくるまっていたあやめが顔をあげる。
「あ……海斗……無事なの?」
「もちろんです。皆も軽傷で済みました。
……あなたを守るために動いただけですので」
あやめは胸を押さえて、涙がにじんだ。
「怖かった……でも……
みんなが守ってくれたの、分かってたから……」
海斗は静かに近づき、
涙をぬぐうように顔を近づけた。
「朝比奈様。
あなたが今、無事でいてくださることが……
私たち五人の何よりの救いです」
その声は、戦闘の緊張を抜けた直後の、
どこか弱さの残る優しい声だった。
「……ねぇ、海斗」
「あやめ様」
「私は……みんなに迷惑かけてばっかりだね……」
「そんなことはありません。
あなたが笑っていてくれるだけで、
私たちは“守った甲斐がある”と心から思えるのです」
あやめは思わず海斗の胸元をぎゅっとつかんでいた。
「ありがとう、海斗……本当に……ありがとう……」
海斗は少し驚いた顔になったが、
すぐに両腕で優しく包み込む。
「恐怖はここで終わりです。
明日からは、また……あなたの日常を取り戻しましょう」
その瞬間、
戦いの空気がすっと消えていくのが分かった。
──────────
廊下の向こうでは兄弟たちがこそこそ話していた。
陽太
「なぁ……明日の朝飯、特別なやつ作るわ」
優真
「じゃあぼく、デザートつくる!」
律
「掃除は僕と蒼真がやりますよ」
蒼真
「……部屋は、もう安全」
みんな、あやめにいつもの日常を戻すために動いている。
家の中に再びあたたかい空気が戻り始めた。
そしてあやめは思った。
(……明日からは、また普通の毎日になる。
この家で、五人と一緒に過ごす……あの幸せな時間に戻れるんだ)
涙はすっかり消え、
胸には小さな安心と期待が灯っていた。
玄関前には兄弟たちが集まっていた。
「……ただいま戻りました」
その声にまっさきに反応したのは陽太だった。
腕に包帯が巻かれている。
「海斗! 大丈夫だったか!」
「陽太……その腕は?」
「ちょっと擦りむいただけだって。蒼真が手当てしてくれた」
横を見ると、蒼真の手の甲にもかすり傷がある。
しかし本人は淡々としていた。
「侵入者、二階の窓に触った形跡あり。
安全確認したから……もう、大丈夫」
律が静かに頷く。
「内部の安全は確保しました。あやめさんは……無事に休んでいますよ」
優真が胸に手を当てて、ほっと息を吐いた。
「怖がってたから……海斗が戻って来てくれて、絶対安心するよ」
海斗は全員の表情を一つずつ確認し、
深く、静かに頭を下げた。
「……すまない。
私が追跡に出たことで、皆に負担をかけた」
陽太はむっとして言い返す。
「何言ってんだよ! 海斗だけに背負わせる気なんかねぇよ!」
優真もうなずく。
「そうだよ〜。五人で守るんだもん」
蒼真も短く言った。
「海斗の判断は、正しい」
律は柔らかい笑みを浮かべた。
「ええ。僕たちは海斗を信じています」
海斗は静かに頷いた。
「侵入者は逃げましたが、あやめお嬢様には我々がついてると
示すことができ、ひとまず……危険は遠ざかりました」
その言葉に四人が一斉に息をつき、
緊張がふっと緩む。
あやめの部屋へ
海斗はそっとあやめの部屋のドアをノックした。
「朝比奈様……入っても?」
中で布団にくるまっていたあやめが顔をあげる。
「あ……海斗……無事なの?」
「もちろんです。皆も軽傷で済みました。
……あなたを守るために動いただけですので」
あやめは胸を押さえて、涙がにじんだ。
「怖かった……でも……
みんなが守ってくれたの、分かってたから……」
海斗は静かに近づき、
涙をぬぐうように顔を近づけた。
「朝比奈様。
あなたが今、無事でいてくださることが……
私たち五人の何よりの救いです」
その声は、戦闘の緊張を抜けた直後の、
どこか弱さの残る優しい声だった。
「……ねぇ、海斗」
「あやめ様」
「私は……みんなに迷惑かけてばっかりだね……」
「そんなことはありません。
あなたが笑っていてくれるだけで、
私たちは“守った甲斐がある”と心から思えるのです」
あやめは思わず海斗の胸元をぎゅっとつかんでいた。
「ありがとう、海斗……本当に……ありがとう……」
海斗は少し驚いた顔になったが、
すぐに両腕で優しく包み込む。
「恐怖はここで終わりです。
明日からは、また……あなたの日常を取り戻しましょう」
その瞬間、
戦いの空気がすっと消えていくのが分かった。
──────────
廊下の向こうでは兄弟たちがこそこそ話していた。
陽太
「なぁ……明日の朝飯、特別なやつ作るわ」
優真
「じゃあぼく、デザートつくる!」
律
「掃除は僕と蒼真がやりますよ」
蒼真
「……部屋は、もう安全」
みんな、あやめにいつもの日常を戻すために動いている。
家の中に再びあたたかい空気が戻り始めた。
そしてあやめは思った。
(……明日からは、また普通の毎日になる。
この家で、五人と一緒に過ごす……あの幸せな時間に戻れるんだ)
涙はすっかり消え、
胸には小さな安心と期待が灯っていた。