五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした

第24話 雪城家の過去

夜更けのリビングで、海斗は静かに言った。

「……朝比奈様。
もう隠すべきではないと思い、お話しします」

あやめは頷いた。
優真、陽太、蒼真、律も静かにそばへ寄る。

海斗は深く息を吸って、真実を語り始めた。


数年前。
雪城家は大手セキュリティ企業を運営していたが、
社員だった一部グループが独立を企て、
会社の機密を盗み出して裏で売りさばこうとした。

そのグループは
黒艶(こくえん)サークルと呼ばれ、
ハッカー・企業スパイ・私設武装員で形成された危険集団だった。

内部崩壊の危機で、雪城家は窮地に立たされる。

「その時、助けてくださったのが……朝比奈あやめ様の母上です」

海斗の言葉に、あやめは息を飲んだ。

あやめの母は情報技術と企業防衛のプロだった。
黒艶サークルのデータ売買ルートを遮断し、
雪城家を法的に守り、再建の道を作った。

その代わり…
雪城家の五兄弟は、母の依頼で
朝比奈家の守護”を誓うことになった。

それが家庭教師兼執事の表向きの顔で、
本当の任務は
あやめの安全保護。


「今回の侵入者……動きと手口から見て、ほぼ確定です」

蒼真が腕を組んで言う。

「黒艶サークルの残党。
雪城家を裏切り、朝比奈家の技術を狙っていた元幹部」

律が説明を続ける。

「復讐と金銭目的……両方でしょうね。
特に今回狙われたのは、お母様のエネルギー転換技術。
世界レベルで価値が高いんです」

優真が心細そうにあやめの手を握る。

「だから……あやめちゃんを利用しようとしたんだよ。
お母さんの弱点はあやめちゃんだから」

陽太が悔しそうに歯を食いしばる。

「あいつら、家族を狙うなんて許せねぇよ……!」

海斗は静かに結論を告げた。

「つまり今回の襲撃は、
雪城家を壊そうとした勢力の復讐でもあるのです。
そして……あやめ様が巻き込まれたのは、我々の弱さでもあります」

あやめは首を振った。

「ちがう……
私のせいじゃなくて……
みんなを守ろうとしてるお母さんを、もっと理解したかっただけなのに」

海斗がそっとあやめの手に触れる。

「その気持ちが分かるからこそ、私たちは守りたいのです。
あなたと……あなたの大切な人々を」



蒼真が低く言う。

「黒艶サークルの残党は、
今回の逃走で位置情報を残した。
雪城家の本部と朝比奈家の協力で……すでに拘束された」


「つまり、今回の襲撃はこれで完全に終わりです」

陽太
「もう家に来ることはねぇよ」

優真
「今日からは……安心して過ごしていいんだよ」

海斗
「これでようやく本当の意味での日常が戻ります」

その言葉を聞いた瞬間、
あやめの胸がふっと軽くなった。

(これで……終わったんだ……
本当に、終わったんだ……)

五人が揃って微笑む姿は、
どこか誇らしくて、あたたかくて。

そしてあやめは気づく。

(この五人がそばにいてくれるだけで……
なんでこんなに安心するんだろう……)

< 25 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop