Naked Love〜涙の跡を舌で辿る時〜
コトコトと、お鍋に火を掛けること、約三十分。

然程時間も掛からずにポトフは出来上がり、何か他にポトフに合う様な物が無かったかと思い、少し考えると…そう言えばまだ食べ切れていないバケットが残っていたなと、何時もの場所に置いてあるバケットのカゴ型ケースの中を探った。

「あった、あった。まだ残ってて良かったぁ」

一昨日マンションの近くで人気のベーカリーで売ってる一番人気のフランスパン。
それは、結構長いので、買って来ると食感が変わらない様に保存する。
本当に私好みぴったりのバケット。

少しだけ噛み応えがあって、でも口に含んだ時のもちっとする、なんとも不思議な食感のバケット。
焼くとサクサクと口当たりが良くて、そこへガーリックバターを塗って食べるのが、私のちょっとした贅沢だ。

ちょっと厚めに切って、トーストする。

別に一人での生活の中の事だから、あまり関係ない情報かもしれないけれど、一斤の食パンやフランスパンは後ろを側を上にして切ると型崩れしないと前に料理番組て流れていたので、それからは失敗せずに切れている…。
まだまだ料理下手と言うか、歴が長いとは言っても、私からしたら、料理番組は非常に助かる情報源。

作っている内にお腹が空いたので、サイズ的にもそんなに大きくはないから大丈夫だろうと、それを三枚焼いた。

その間に大きめのスープカップへと、ポトフを盛ろうとしてから、ポトフが煮込まれる間の序でに、簡単な人参サラダを作っていたと思い出した。

チンッ

オーブンが控え目にそんな音を出し、トーストを終えた事を知らせる。


人参のサラダにはシーザードレッシングを掛けた。

そして、ランチョンマットに出来上がった料理を全て並べて、それらを見つめながら、割と我ながらに上々な仕上がりだと自画自賛する。
映えはしないし、誰に見せるわけでもないから写真は撮らないけれど。

ローテーブルの何時もの位置に座り込んで、ぱちん、と小さく手を合わせてから、小さい声で。

「いただきます…」

そう呟いて、パキッと一口大にバケットを割ってそのまま頬張る。

カシュ、カシュとした、独特の咀嚼音にちょっとした満足感を覚え、お皿の中からじゃがいもを掬って、ふぅーふぅーと息を掛けて出来たてのポトフの温度を、火傷しない程度に冷ました。

雨音をBGMに食事を始めて、あ、そう言えば、と。
先週末に録画しておいた映画でも観ようと、友人から譲り受けた独り暮らしにピッタリの、プロジェクターを動かす。

少し前の型だと言われていたけれど、使い勝手は凄く良くて、何よりも映像を流す前に耳へと届く、ジジッというノイズ音が微かに響くのが、なんともノスタルジックで素敵だと思っている。

一度席を立ってから用意をして、机に乗せているリモコンで操作をした。

始まった映画は、大分前に三本立てでシリーズ上映をしていた、有名な作者の推理小説が原作の洋画。わざとモノクロで撮影しているのがまた、作品を美しく色付けていく。

色が無くても分かる、主人公の恋人の深紅に染まったルージュと、大振りの真珠のイヤリング。
それが動く度に、物語が推理をしていく上で、切なさを叙情していく。

主人公は飄々としていて、彼女の想いを分かっていても、無茶をする。


「私を置いて行かないで!」

そんな悲痛な叫びに何時も自分自身を重ねていた。

私はそこまで流して観ながら、パパっと食事を済ませ、ソファに適当に置いておいたブランケットを引っ張り、自分の体に巻き付ける。
何回も観ている映画だから、取り敢えず半分程観た後で、少し熱めのシャワーだけ浴びて来ようか、それとも冷えている体をしっかりと温める為にお湯を張ってお風呂に入ろうかと、暫く悩んだ。そして、よし!特別の日に使おうと取っておいた入浴剤の種類を頭の中で、幾つか頭のピックアップしながら、鼻歌を歌いつつお風呂に入ろうと思った瞬間、個別に着信音を変えているスマホが鳴った。

私は取り敢えず、お風呂のお湯張りのスイッチだけ押してから、スマホを取りにテーブルの方に近付いた。

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