転生した赤ちゃん皇女さまは家族のために暗躍します~冷酷皇帝一家の天才幼女がどんな事件も解決でしゅ!~
26.プランG
私は真っ青になっていた。モナックがグレンダに捕まっているのだ。
このまま飛び込んでやろうと思ったが……猫ちゃんが必死になって、私を屋根から引っ張る。
もう引き下がれということなのだろう。
(うぅ、すぐ下にモナックがいるのにでしゅ……!)
でも猫ちゃんの判断は間違っていない。私が聞いたのは声だけだ。
館には当然、護衛がいる。今だとグレンダもいる。
私だけが突撃して――どうにかなるだろうか?
映画の主人公のように、武力だけで難問を解決できるだろうか。
答えは多分、否だ。
私の魔力はまだグレンダに及ばない……多分、身体強化とかの一部の魔法の使い方は上かもだけれど。
でも体系的な魔法の知識まで含めれば、グレンダのほうが遥かに上だろう。
古書保管庫とボルツの件も納得ができた。
グレンダはモナックを封じる手段を探していたんだ。
そのためにグレンダはボルツを利用した。
そこで私ははっとする。
(……だから原作でモナックは出てこなかったんでしゅね!)
今から未来にあたる原作本編で、どうしてモナックはいなかったのか。
ずっと疑問だった。でも恐ろしい事実とともに私は納得した。
きっと原作の世界でも語られていない過去に、モナックはグレンダに排除されたのだ。
私がもっと大きくなる前、家族の絆が強くなる前に……。
つまり早くどうにかしないと、モナックは永遠に私たちの前からいなくなってしまう。
でもそれには、私だけでは危険すぎる。これは家族の危機なのだ。
(落ち着くでしゅ。まだ、グレンダはモナックをどうこうとはできないはずでしゅ……)
ここで失敗したら、きっと原作のような破滅的な未来になってしまう。
手段は選んでいられない。
グレンダが二度と悪さができないよう、徹底的に戦わなくては。
彼女はもうモナックへの対抗手段を見つけてしまっている。
「――あたちもやってやるでしゅよ」
モナックがいなくなる、そういう事態を彼女も想定していないわけではなかった。
『あたしは精霊にゃん。どんな剣でも魔法でも傷付かないのにゃ』
『おおー……無敵ってことでしゅか』
ハリウッド映画の主人公みたいに。もしくは超強いヴィランみたいに。
『にゃうん。でも制約があるにゃ……あたしは人を傷付けては駄目なのにゃ』
『……なぬ?』
確かに密輸犯を捕まえる時でも直接、手を貸してくれたことはなかったけれど。
『これは絶対の契約にゃ。あと、あたしを無力化することはできなくもないにゃ――封印、弱体化とかにゃん』
『そんなことにはならないでしゅよね……?』
不安になって私はモナックを抱きしめる。
『万が一、ということもあるのにゃ。だからあたしが陥るかもしれない危機について、しっかり覚えておくのにゃん!』
今がその時だ。
モナックがいなくなり、翌日になって。
さすがに丸一日モナックがいないのをカミルも不思議に思っていた。
「おかしいわね。モナックがこんなにも帰ってこないなんて……」
寝室ではこっそりモナックを吸っているカミル。
自由気ままな猫ではあるけれど、さすがに心配になっているようだ。
「ばぅ、うー……」
「まさかボルツに続いて、モナックも……? いえ、これまで数日いないこともあったし、でもここ最近は――」
扇をパチリと開けたり閉じたりしながら、カミルは落ち着きなく部屋を行き来していた。
信じよう。
これまでの母を見て、私はそう思った。ボルツもモナックも家族なんだ。
カミルが席を立っている間に、私はソーニャを呼び寄せて事情を説明する。
「モナック様が……グレンダ様の差し金なのですね。あの御方なら、やりかねません」
『ソーニャはグレンダに批判的でしゅね』
レイン、カミルを含めてグレンダには先日の件まで悪感情はないようだったけれど。
「あの御方はメイドや執事には厳しいのです。皇妃様のお耳に入れることではございませんが……」
なるほど。私の太ももをつねってきて、モナックを捕まえるグレンダは弱い者虐めがきっと好きなのだろう。見ている人は見ているものだ。
「にしてもモナック様を捕らえるなんて、許されません。すぐに救出の手を打たなくては」
『……考えがあるでしゅ』
「おおっ、ラミリア様には妙案が?」
ついにここでプランG(ジーニアス)を発動させる時が来たのだ。
『いいでしゅか、グレンダへの完全勝利を目指すでしゅよ!』
重々しく頷くソーニャに、私は流れを打ち合わせする。
プランGとは私の能力の一端をカミルに披露する計画だ。
もちろん前世がうんぬんは言わないでいて。
モナックやソーニャに対してのように、天才児ということにしておく。
危険な手だが、やるしかない。
モナックを早急に救出して、グレンダを追い詰めるには。
どうしても私とソーニャだけでは無理だ。
家族の助けがいる……!
「皇妃様、少々よろしゅうございますでしょうか?」
「ソーニャ、何かしら?」
カミルが部屋に戻って来た時、ベビーベッド横のソーニャがカミルへ声をかける。
「モナック様の件を話されてから、ラミリア様の様子に気になるところがございまして」
「……え?」
カミルがすすっと私のそばに来る。
ここからだ。私がこれまでに培った演技力の見せどころである。
「だうっ、あーうー」
私はばぶばぶ言いながら、ベビーベッドの中から指を差す。
グレンダのいる館の方向へ。
「まんま……」
「ラミリア……どうかしたの?」
そこで私は指先に魔力を集めて、空中に文字を書いた。
『もなっく、あっち!』
普段の私からすれば非常に子どもっぽい文章だ。
でも一歳児としては超絶的に賢い文章である。
「ラ、ラミリア……あなた」
さすがに目を見開くカミルの前で、私はさらにデモンストレーションを行った。
玩具として買い与えられていた、カラフルな棒。
それを身体強化の魔法で、片手だけでへし折ったのだ。
そして私はわざとたどたどしく、文字を書き始めた。
作戦も込みで。カミルが私を信じてくれることを願って……。
このまま飛び込んでやろうと思ったが……猫ちゃんが必死になって、私を屋根から引っ張る。
もう引き下がれということなのだろう。
(うぅ、すぐ下にモナックがいるのにでしゅ……!)
でも猫ちゃんの判断は間違っていない。私が聞いたのは声だけだ。
館には当然、護衛がいる。今だとグレンダもいる。
私だけが突撃して――どうにかなるだろうか?
映画の主人公のように、武力だけで難問を解決できるだろうか。
答えは多分、否だ。
私の魔力はまだグレンダに及ばない……多分、身体強化とかの一部の魔法の使い方は上かもだけれど。
でも体系的な魔法の知識まで含めれば、グレンダのほうが遥かに上だろう。
古書保管庫とボルツの件も納得ができた。
グレンダはモナックを封じる手段を探していたんだ。
そのためにグレンダはボルツを利用した。
そこで私ははっとする。
(……だから原作でモナックは出てこなかったんでしゅね!)
今から未来にあたる原作本編で、どうしてモナックはいなかったのか。
ずっと疑問だった。でも恐ろしい事実とともに私は納得した。
きっと原作の世界でも語られていない過去に、モナックはグレンダに排除されたのだ。
私がもっと大きくなる前、家族の絆が強くなる前に……。
つまり早くどうにかしないと、モナックは永遠に私たちの前からいなくなってしまう。
でもそれには、私だけでは危険すぎる。これは家族の危機なのだ。
(落ち着くでしゅ。まだ、グレンダはモナックをどうこうとはできないはずでしゅ……)
ここで失敗したら、きっと原作のような破滅的な未来になってしまう。
手段は選んでいられない。
グレンダが二度と悪さができないよう、徹底的に戦わなくては。
彼女はもうモナックへの対抗手段を見つけてしまっている。
「――あたちもやってやるでしゅよ」
モナックがいなくなる、そういう事態を彼女も想定していないわけではなかった。
『あたしは精霊にゃん。どんな剣でも魔法でも傷付かないのにゃ』
『おおー……無敵ってことでしゅか』
ハリウッド映画の主人公みたいに。もしくは超強いヴィランみたいに。
『にゃうん。でも制約があるにゃ……あたしは人を傷付けては駄目なのにゃ』
『……なぬ?』
確かに密輸犯を捕まえる時でも直接、手を貸してくれたことはなかったけれど。
『これは絶対の契約にゃ。あと、あたしを無力化することはできなくもないにゃ――封印、弱体化とかにゃん』
『そんなことにはならないでしゅよね……?』
不安になって私はモナックを抱きしめる。
『万が一、ということもあるのにゃ。だからあたしが陥るかもしれない危機について、しっかり覚えておくのにゃん!』
今がその時だ。
モナックがいなくなり、翌日になって。
さすがに丸一日モナックがいないのをカミルも不思議に思っていた。
「おかしいわね。モナックがこんなにも帰ってこないなんて……」
寝室ではこっそりモナックを吸っているカミル。
自由気ままな猫ではあるけれど、さすがに心配になっているようだ。
「ばぅ、うー……」
「まさかボルツに続いて、モナックも……? いえ、これまで数日いないこともあったし、でもここ最近は――」
扇をパチリと開けたり閉じたりしながら、カミルは落ち着きなく部屋を行き来していた。
信じよう。
これまでの母を見て、私はそう思った。ボルツもモナックも家族なんだ。
カミルが席を立っている間に、私はソーニャを呼び寄せて事情を説明する。
「モナック様が……グレンダ様の差し金なのですね。あの御方なら、やりかねません」
『ソーニャはグレンダに批判的でしゅね』
レイン、カミルを含めてグレンダには先日の件まで悪感情はないようだったけれど。
「あの御方はメイドや執事には厳しいのです。皇妃様のお耳に入れることではございませんが……」
なるほど。私の太ももをつねってきて、モナックを捕まえるグレンダは弱い者虐めがきっと好きなのだろう。見ている人は見ているものだ。
「にしてもモナック様を捕らえるなんて、許されません。すぐに救出の手を打たなくては」
『……考えがあるでしゅ』
「おおっ、ラミリア様には妙案が?」
ついにここでプランG(ジーニアス)を発動させる時が来たのだ。
『いいでしゅか、グレンダへの完全勝利を目指すでしゅよ!』
重々しく頷くソーニャに、私は流れを打ち合わせする。
プランGとは私の能力の一端をカミルに披露する計画だ。
もちろん前世がうんぬんは言わないでいて。
モナックやソーニャに対してのように、天才児ということにしておく。
危険な手だが、やるしかない。
モナックを早急に救出して、グレンダを追い詰めるには。
どうしても私とソーニャだけでは無理だ。
家族の助けがいる……!
「皇妃様、少々よろしゅうございますでしょうか?」
「ソーニャ、何かしら?」
カミルが部屋に戻って来た時、ベビーベッド横のソーニャがカミルへ声をかける。
「モナック様の件を話されてから、ラミリア様の様子に気になるところがございまして」
「……え?」
カミルがすすっと私のそばに来る。
ここからだ。私がこれまでに培った演技力の見せどころである。
「だうっ、あーうー」
私はばぶばぶ言いながら、ベビーベッドの中から指を差す。
グレンダのいる館の方向へ。
「まんま……」
「ラミリア……どうかしたの?」
そこで私は指先に魔力を集めて、空中に文字を書いた。
『もなっく、あっち!』
普段の私からすれば非常に子どもっぽい文章だ。
でも一歳児としては超絶的に賢い文章である。
「ラ、ラミリア……あなた」
さすがに目を見開くカミルの前で、私はさらにデモンストレーションを行った。
玩具として買い与えられていた、カラフルな棒。
それを身体強化の魔法で、片手だけでへし折ったのだ。
そして私はわざとたどたどしく、文字を書き始めた。
作戦も込みで。カミルが私を信じてくれることを願って……。