秘密な恋愛
​ガラッ

​横のドアが勢いよく開くとともに

​「芽依っ?!」

​ずっとずっと聞きたかった、
自分を呼ぶ愛おしい声。

「佑···」

​まさか佑陽が来てくれるとは思わなかったのか、芽依はぽかんと固まってしまう。
けれど次の瞬間、視界が涙で熱く滲んでいった。


​「··良かった。ここにいたんだな」

​心底安心したような、どこか愛おしそうな声。
佑陽はその場にしゃがみ込み、小さくなっていた芽依の体を勢いよく抱きしめた。

芽依の身体は
使われていない校舎の冷たい空気で
冷えていた。

(冷て···)

「··風邪引くぞ」
そう言い、佑陽は自分の着ていたブレザーを
芽依の背中に掛けた。



「どうして···?」
​「えっ?」


​ポロポロと溢れ出す涙。
勝手に逃げ出して迷惑をかけたのだから、
きっと怒られるのだろうと身構えていた。

けれど聞こえてきたのは、怒声ではなく自分を
心配する優しい言葉だった。

​「怒らないの?」

​「···芽依がそうしてほしいなら、いくらでも怒るけど」

​呆れつつも愛おしそうに、
佑陽は芽依の背中を擦りながら
優しくなだめる。



​「ごめん···なさいっ」

​その一言には、あの時言ってしまった言葉と。
佑陽に
迷惑をかけてしまったこと。

朝に冷たい言葉を投げかけて逃げてしまったこと。抱え込んでいた全ての感情と後悔が詰まっていた。



​「···うん。俺も朝、冷たい態度取った。芽依が謝ろうとしてくれてたの、分かってたのに。··ごめんな」


​佑陽の言葉に、
静かに頷く芽依。
​
冷え切っていた芽依の心と体が、佑陽の抱きしめてくれる体温で温められていく。
この時間が、
芽依にとってはたまらなく心地よかった。
< 671 / 676 >

この作品をシェア

pagetop