ずっと夢を見ていたかった

第10話 麻由夏

春と楓は、登下校にバスを利用していた。
ある日の下校時、バスが事故に遭った。

春と楓が事故に遭った時、
同じバスに乗っていた女の子がいた。



私は麻由夏。

17歳だけど、高校には行っていない。
両親はいない。施設で育った。
中学卒業と同時に施設を出て、就職した。
ひとりで暮らしている。


仕事帰りのバスでよく見かける女の子2人組。
育ちの良さそうな、かわいい女の子達。
ハル?とカエデ?とかいう名前らしい。
サクマ?とかいう男の子が一緒の時もある。
カエデの彼氏みたい。

私とは縁のない幸せな高校生達。
羨ましくないと言ったら嘘になる。


「春、あれ冬馬さんじゃない?」
バスの窓から春の兄・冬馬を
見つけて楓が言う。
「えっ?お兄ちゃん?」


冬馬?久しぶりに見かけた。
涙が出そう。

冬馬は私の元彼だ。
彼の両親に付き合うことを
反対されて別れた。

冬馬のお父さんは政治家だ。
将来政治家になる冬馬に、
私は相応しくなかった。

ハルは冬馬の妹だったのか。
そういえばどことなく似ている。

冬馬の話では、両親は冬馬にばかり
過干渉で、妹のハルは空気のような扱いを
されているらしい。


誰が見ても幸せそうな女子高生のハル。
信じられなかった。


その時。
強い衝撃。
身体が痛い。
事故?
バスが横転した?
わからない
意識が朦朧として…。

私は死んだの?
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