運命の恋は、スマホの外にありました
 いつの間にか、ベンチの傍に一人の男性が立っていて、こちらを見つめている。ぼんやりしていて、全然気付かなかった。

「あっ、すみません」

 何に対してか分からない謝罪をしてから、改めて男性を見る。
 私より少し年上だろうか。土曜なのにスーツ姿のその人はスラッと背が高く、クセのない整った顔立ちでなかなかのイケメンだ。
 面白そうに私を見る瞳に怪しげなところはないけれど、人けのない場所で男性と二人きりだなんて危険かもしれない。
 警戒した私の目に、不意にパステルグリーンがチラついた。

「あれっ?」

 思わず声が出てしまったのは、男性がさっき私が買ったのと同じ、メロンクリームソーダのペットボトルを手にしていたからだ。
 自家焙煎のスペシャリティコーヒーが似合いそうなシゴデキ感漂う男性と、メロンクリームソーダの組み合わせ。正直、ミスマッチだ。
 男性は私の視線に気付くと、爽やかに笑った。

「美味いんだよ、これ。俺、こういうジャンクな飲み物好きなんだよね。おっ、君とお揃いじゃないか」

 私の傍らにあるペットボトルを指差して、嬉しそうな顔をする。
 その柔らかな微笑みに、私の警戒心は引っ込んでしまった。
 男性はベンチの端に座ると、プシュッと小気味良い音を立てて、ペットボトルの蓋を開けた。

「怖がらせたのなら、ごめんね。このベンチ、俺の指定席なんだ。人がいなくて落ち着けるから、仕事の休憩中によく来ててさ」

「あ、いえ。お構いなく……」

 私の言葉に頷いてみせてから、男性はペットボトルに口を付けた。
 グビグビと勢い良く飲んでから、「プハーッ」と美味しそうに息を吐く。まるで、仕事終わりに飲むビールみたいな反応だ。

「そんなに面白い? 俺がメロンクリームソーダを飲む光景」

 何気なく投げられた視線と言葉に、つい、男性をまじまじと見つめてしまっていたことに気付く。
< 3 / 20 >

この作品をシェア

pagetop