月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
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その日の深夜。
「桐杏、こっちだ」
闇夜の中、風来念がささやき声で桐杏を呼ぶ。桐杏は風来念から着物を借りて、役人に変装していた。女性とわからないよう、長い髪は後頭部でひとつにまとめて、頭に笠をかぶっている。
桐杏より前を歩く風来念は人気のない道をたどった。敷地内の人間に見つからないよう、ふたりは慎重に歩み進める。そうして、まずは第二夜伽の女性の家に行き着いた。百五十五センチメートルほどの身長に、推定七十キログラムの、丸みをおびた体型をしている。年齢は桐杏と同じくらいだろう。
「初めてお目にかかります。私は第三夜伽の桐杏です」
桐杏は笠を取って、髪をほどいてから、自己紹介する。
「……私は瑚乃」
「では、瑚乃さんと呼びますね。私もあなたと同様、寧丸さまには夜伽の相手をさせるつもりはないと言われ、彼と体を交えたことはありません。第一夜伽の女性だってそうです」