月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


「おお、なんと美しい少女なんだ! 私は画家です。その娘の肖像画をぜひとも私に描かせてほしい!」


 その途中、桐杏を見た通りすがりの老夫が頼み願う。


「老人、すまないがわれわれは旅を急いでいる。バロンへ行って、丸希(まるき)という役人からこの娘の肖像画を描く許可をもらったと、三箇という役人に伝えてくれ」


 寧丸が言った。「丸希」は三箇が考えた寧丸の偽名だ。桐杏は寧丸の行動にはらはらとする。


「わ、わかりました」


 寧丸が言うと、老夫は彼が皇子だと気づく様子もないまま、立ち去る。バロンでは寧丸の名が通っていても、隣町まで来るとそうではなかった。
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