月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「命令を拒めば、家族のうちのひとりが絞首刑だぞ」
「桐杏が夜伽者にならずに済むのなら、よろこんで私が死のう」
阿村は役人の前に出た。
「お父さん!」
桐杏は叫ぶ。
「……まあ、聞け。私はなにも快楽殺人者ではない。むしろ、むだな血を流したり、命を奪うのは好ましくないと思っている。なにが言いたいかというと、身代わりとなるのはやめておけ。それはきっとむだ死にとなるだけだ。お前が死んだところで、数年後に妹の方を迎えに来るだけだぞ」
璃社はこれがただならぬ事態だと本能で気づいたのだろう。体をぶるぶると震わせている。
「それに、夜伽者は必ずしも不幸な制度ではない。その家族は対価として、税を一生払わなくてよいのだから。自分の娘が夜伽者に選ばれることを望む親だって、世の中少なくないのだぞ。阿村と言ったか。お前は確か医者だったな。お前が働きやすいよう、診療所の設備をととのえてやろう」