月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「寧丸皇子に失礼のないよう、体はつねに清潔にしておけよ。彼に不潔と思われたら、すぐさま処刑だってありえるぞ」
小太りの役人は冷たくそう言い放って、立ち去る。彼のひと言で、これから自分の体をもてあそぶであろう皇子の名を知った。
桐杏はこの五日でいちども入浴していない。正確には、脱走のおそれがあるからと、一回も風呂に入らされていなかった。黒くて長い髪はべたべたとしている。桐杏はさっそく浴室で全身を洗う。役人に言われなかったとしても、すぐにそうしていたに違いない。気持ちの問題だった。