月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
食事は一日三食、時間どおりに運ばれてくるとのこと。逃げようとしたり、反乱を起こしたり、敷地内にいる人間を攻撃すれば、その場で処刑されるらしい。また、自ら命を絶てば、罰としてその家族が殺される。女である夜伽者はここでの生活を受け入れておとなしく過ごす傾向にあるが、過去にここから脱出しようと役人に傷を負わせて、殺された者はひとりだけいるとのこと。
夜伽者という名でも、日中は縫製など、簡単な作業を家でさせられるらしい。皇子の夜の相手をさせるだけでなく、りっぱな労働力としても利用するようだ。読書や伝統的な遊びだけでは時間をもて余すと感じる桐杏には、好都合だった。いくら曲作りがしたくとも、膨大な時間を曲作りにすべてあてるのというのも、むずかしい。だれかに聴いてもらえる機会もないということが、今はその意欲をそぐ。