月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「判大狗さん、大丈夫だったのかな……」
桐杏はムチで打たれた判大狗のことを心配する。あの後、阿村が彼を治療したに違いない。傷口から雑菌が入って、高熱を出したりしていないか。そうだとしていたら、彼のような老人には生きるか死ぬかの瀬戸際となるはずだ。
「マチノも、今頃さみしがっているのかな……」
桐杏がなぜ急にいなくなったのか、マチノは人間のように理解することはできないだろう。彼のように賢い犬なら、桐杏が望んで島を出たのではなく、連れ去られたことは理解しているだろうが。マチノは桐杏が帰ってくることを信じて待ち続けているに違いない。
家族や訓出、他の島民たちだってそうだ。そんなことはありえないと理屈ではわかっていても、桐杏の帰りを信じていることだろう。
桐杏は四百キロメートルは先の島民に届くよう、音楽を奏した。