月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 気力がなくなるまで演奏していたため、いつの間にか眠っていたようだ。


「ん……」


 次に目が覚めた時には日が落ちていて、家の中はすっかりと暗くなっていた。


 桐杏は寧丸という名の皇子について考える。皇族には会ったことも、姿を見たこともない。皇帝・畏怖羅(いふら)は国民の幸福などまるで考えていない、身勝手な人間の印象がある。畏怖羅はおそろしい人間だと、判大狗から教えられてきた。畏怖羅は寧丸の父親だ。彼の血を色濃く受け継いでいる可能性が高い。


「訓出と違って、嫌な人なんだろうな……」


 今後、自分が特に関わる人間が非情となると、桐杏は会うのが憂鬱となる。
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