月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 桐杏たちは玉座の間を後にする。


「この女のせいで、私はとんだ恥をかいた。説教しないと気が済まない。しばし、ふたりだけとさせてくれ」


 寧丸は役人たちの前で桐杏を別室へ連れていった。そこで桐杏と寧丸はふたりきりとなる。基本的に夜しか会えない男女の、つかの間の幸せだ。


「――桐杏、力になれなくて、すまない」


 寧丸は顔色を変えて、申し訳なさそうに謝った。


「寧丸さまが謝る必要はありません。あの、皇帝は体調が悪いのですか? 頭痛に悩まされているように感じました」


「いや、おそらく健康のはずだが――それに、桐杏の曲には治療効果があるのだから、聴いた後で不調というのは矛盾している。きっと、遠征の疲れが出たのかもしれない」


「……」


 桐杏は玉座の間での出来事を思い出す。畏怖羅には自分の音楽はくだらないものだとあしらわれた。それは自分自身を否定されたのと同然だ。
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