月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「私は夜伽者の制度は廃止すべきだと思っている。しかし、その制度があったからこそ、こうして桐杏と出会えたのもまた事実――皮肉な巡り合わせとは、まさにこのことだな」
「……」
桐杏は寧丸の小さい声での発言に心がどきどきとした。今は自分が夜伽者に選ばれたことを不運に感じていない。故郷に再び帰って家族や島民たちと過ごしたいけれど、寧丸と出会う前に戻りたいとはまったく思っていないという、相反する思いが桐杏の中にある。
「そろそろ戻ろう。役人の前では私に怒られてしゅんとしたような顔をしてくれ」
ふたりは示し合わせてから、部屋を出た。
「うっ、うっ」
桐杏は泣いているふりをしながら、寧丸の後ろをついていく。寧丸のそばにいるためには顔つきや態度を使い分け、どんなことにも堪える必要があると感じる。