月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「お礼にこの桃をやるよ。ああ、もっと果物をもってくればよかったな。俺ってば、気がきかない」
風来念は桐杏に桃をひと玉差し出す。
「お礼は別にいいですよ」
「いや、受け取ってくれ。だから、俺がここへ来たことは内緒にしてほしい」
「わかりました。秘密は厳守します」
桐杏はその桃を受け取る。自分の音楽で治療して、報酬をもらう。桐杏からすれば、それは夜伽者になる前に考えていた、自分にとっての理想的な人生だった。
「お前、いいやつだな。名前は?」
「桐杏と申します」
「ふーん、桐杏って言うんだ。寧丸皇子の言うように、俺も桐杏は医療班に回すべきだと思う。桐杏に特別な能力がなかったとしても、医療班が適任だっただろうな。桐杏は存在だけで男たちに癒しを与えるに違いない。並外れた美女だからな」
「……」
桐杏は風来念を横目で見つめる。