月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


「あっ、俺は桐杏に恋心をいだいているわけではないぞ。なにも桐杏の気を引こうとして言ったわけじゃないからな」


 風来念は慌てた。


「はい」


 桐杏はその様子にくすっと笑う。風来念は陽気で、よく喋る印象だ。その性質は訓出を彷彿とさせる。


「俺、人を好きになる気持ちというものがよくわからないんだ。恋愛小説を読んでも、自分は男なのに、王子さまに愛されるお姫さまがうらやましくなったりする。だから、自分は女が好きなのか、男が好きなのかすらわからない――って、初対面の人間の前で喋りすぎか」


「恋愛に関する価値観について、私の前で言っても大丈夫ですよ。私はそれをだれかに話したりしませんので」


「……」


 風来念ははにかんだ。口が堅そうな桐杏に心を開いたというような表情だ。
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