月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
話を聞く限り、風来念は現実を離れた、甘美な空想などを好むようだ。島育ちで訓出とばかり遊んでいた桐杏は、恋愛物語を読んで自分もこんな恋がしたいと思うような幼少期を送っていない。風来念は好みの傾向が自分とは異なると感じる。
「美人で高等能力者。おだやかで優しい。桐杏が高貴な身分に生まれていたら、皇子の后になれていたのかもしれないのに」
「私はフルハ島で生まれたことを後悔していませんし、故郷を誇りに思っています」
桐杏はきっぱりと言った。ただ、この先、寧丸は后をめとるのだろうか。后という単語を耳にして、そんなことを思った。その前に、寧丸に妻がいるのかどうかも聞いていない。十六歳という年齢を考えると、既婚で筋違いな感じはなかった。皇子という立場であれば、婚姻は避けて通れないだろう。桐杏は切なくなった。