月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「俺は田舎から町に出たくてたまらなかったのに、桐杏は違うんだ。桐杏をそこまで思わせるフルハ島はきっといい場所なんだろうな」
風来念は長椅子から立ち上がる。
「じゃあ、俺、仕事場まで戻るよ。俺がまた病気になった時はよろしくな」
笑顔で手を振りながら去った。
「はい」
桐杏は風来念に会釈する。役人に「女」呼ばわりされるのが常のこの屋敷で、風来念だけは自分を本当の名で呼んでくれたことがうれしかった。役人の中にも、心が通じ合う人間はいる。桐杏はほっとしていた。