月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 ふいに、桐杏は風来念との会話を思い出す。


「あ、あの、寧丸さまにお后さまはいるのでしょうか?」


 次会った時に質問しようと思っていたことを聞いた。


「いないよ」


 寧丸はあっさりと答える。桐杏はその事実に心の底から安堵した。同時に、寧丸を独占したい自分の思いの強さを知る。身の程をわきまえない自分を恐ろしいとすら思った。


「ただ、幼い頃から候補者が挙がっても、私にはもっとふさわしい結婚相手がいるに違いないと、父が私の代わりに断ってきただけに過ぎない。国力を増強させるためにも、父は必ずや長男の私を結婚させるだろう」


「……」


 それを聞いて、桐杏は悲しい気持ちとなる。寧丸が結婚すれば、夫婦生活が優先で、夜伽者の自分と会う機会も減るだろう。彼に会えたとしても、他の女性の影を感じるのは辛い。その女性は正式な妻で、その女性の方が、自分よりずっと身分が高いというのに。
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