月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「……」
桐杏から見て、寧丸は切れ者の印象がある。だから、策もなしに言っているわけではないのだろう。けれども、桐杏からすればあまりにも危険で、現実的でないと感じる。桐杏の家族が島を脱出したとしても、行方を隠匿しているとして、フルハ島のだれかが犠牲になるだろう。いや、全員殺されてしまうかもしれない。軍事境界線を無事に越えられるのかどうかも未知数だ。
そして、考える。果たしてそれが寧丸にとっての本当の幸せなのか?と。時期皇帝が約束された人生で、子どもの頃からたくさん勉強してきたはずだ。実の父親を反省の材料とし、自らが皇帝となって、国をよくしたい思いもあるだろう。
桐杏は思う。寧丸には自分ひとりのためだけに、多くを失ってほしくない。ふたりの関係がどうにもならなくなった時は、自分が彼のもとから離れるのがいちばんよいのでは――と。この先、寧丸に婚約者が現れた場合、桐杏は彼のために別れを選ぶと決めた。