月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


「桐杏、私とともにそなたの故郷へ行こう」


「夜伽者は一生敷地内から出られないはずです。そんなことが可能なのですか?」


「父が床に臥している今が好機だ。私は父が私の多少のわがままを許すことに昔から気づいている。なぜならば、私は父がこの世で最も愛する女性の息子だからな」


 畏怖羅が自分の妻をそれほどまでに愛しているとは、桐杏からすれば意外だった。彼にとって人生で大事なのは国や自分の立場で、政治に好都合な女性を結婚相手に選んだと想像していたからだ。


「私、夢の中で皇帝に『私に逆らったらこういうことになる』と脅されました」


 桐杏は畏怖羅の存在をより脅威に感じている。寧丸と行方をくらませたりしたらどうなるか、という警告に思えてならない。
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