月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「よいのだ。十四歳であどけない風来念であれば、彼らと戦う気はないという意思表示にもなる。皇子の私が島へ来たのはあくまで調査なのだと、島民たちの警戒心が解けることだろう。それに、戦うなら私ひとりでじゅうぶんだ」
突如、寧丸の左手は橙色の大きな光に包まれる。聞いていた話とは違うような能力に、桐杏は口を大きく開けて驚いた。
「その女の親は娘に対する恩愛の情が深いようです。娘に夜の相手を強制させた男が憎いと、女の父親に寝首をかかれかねません。人間は『人を殺してはいけない』と理性でわかっていても、感情で動くことが多々あります」
先ほどとは別の役人が言う。桐杏をフルハ島まで迎えに来た時にいた大男だ。ただ、見た目は強面でも、阿村が桐杏の身代わりとなって死ぬことを止めたので、桐杏にとってそこまで悪い印象はない。