本物の選択
ギターの佐伯が沈黙を破っていった言葉に
他のメンバー全員が耳を疑った。
和也もそうだったと思う・・・・。


佐伯は申し訳なさそうにボソっとつぶやいた。
「俺も実家に帰って家業を継ぐ・・・・」


和也のことはもみんなうすうす気がついていた。
いつ仲間を見捨てるか?と思っていた奴も中にはいるだろう。

しかしまさか・・・、
佐伯までもやめると言い出すとは思っていなかった。

佐伯は実力はソコソコで他に引き抜かれるような心配はあまり必要のなかったメンバーで、
しかも、メンバーで一番音楽は大好きで
自分の夢を捨てるのは誰も想像していなかったからだ。

俺はメンバーの中でも一番年下だったが、
ヴォーカルであり、
他のメンバーよりも強く強くプロを意識していたという事で
他の年上メンバーからも一目を置かれていたため、
なんとなくリーダーを任されていたし、

寄せ集めにしては仲が良くて年齢にかかわらず
皆がメンバー同士同い年のように接していた。

しかし
俺はあまりにも急な佐伯の言葉にわれを失って怒ってしまった・・・・。

「佐伯・・・それどういうこと?」

あまりにもとげとげしい俺の言い方に、
3つ年上の佐伯も少しキレた様子だった。

「和也は良くて俺はダメなのか?」

佐伯は普段から仲間の中でも優しい存在で
キレる事はほとんどなかった。
しかし、このときは普段と違っていた。

俺のほうも
一番信頼していた佐伯からの脱退申し入れに
今までには見せない感情で怒っていた・・・・・・・・・



いや、怒ってしまっていた・・・・・・・・・・・・・・・

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