本物の選択
俺だって和也を止める奴が誰もいなかったのだから
佐伯も好きなようにさせてやるのが筋だとは分かっていた。

しかし、一番信頼していて、
しかも、コイツだけは自分と最後まで一緒にロックバンドを組んで
年をとっていく存在だとなんとなく決め付けていたから
その俺の思い込みを裏切った佐伯にとげとげしく突っかかってしまっていた。

佐伯が怒るのも無理はない。
俺の勝手な思い込みで佐伯は自分から離れないと勘違いしていただけだから、
佐伯からしてみればそんな事は知った事ではないはずだ。


しかし、俺は自分を止められなかった。
「お前絶対プロになろうなって言ってたじゃんかよ!」


佐伯はイラだった様子で俺を睨みつけていた。
しかし、一瞬間をおいて答えた。
「皆で力をあわせてやってきて2年・・・自分の実力を実感せずにはいられなかった。夢を見ることは大事だと俺も最初は思っていた・・・。しかし、夢だけでこのワガママを通すわけには行かなくなった・・・・・・。」



夢だけでこのワガママを通すわけには行かなくなった・・・・・・。???

意味深というか分かりやすいというか・・・・・・・

なんとなく誰の脳裏にもその後の言葉が想像できた。

「結婚したい奴ができた・・・。まだ親にも話してないが、実家に帰ることと同時に打ち明けるつもりだ。もう自分の実力ではプロのバンドは無理なのは感じていたし、そろそろ自分にも守ってやりたい女(ひと)と現実で生きて行こうと思う・・・・・。」




俺の脳裏には封印していたあの人のことが浮かんだ・・・・・・・・・・
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