ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
プロローグ
 視界には存在しなくても、目を閉じれば、いつだって彼と出会えた。
 彼女が知っている……いや、脳内で勝手に妄想している彼は優しくて紳士的な好青年。
 肉体接触もハグまでで、極めて健全。水族館デートでは暗がりの中そっと手を繋いだり、イルカショーではとびきりの笑顔を向けてくれるような……そんな男だと思っていた。

 しかし、今目の前にいる「ホンモノ」はそれらと全く違う。

 何度も淫靡な言葉を口にし、彼女を責め立てる。未知の光景へ至るのを今か今かと彼女の身体は待ち構えていた。
 恥ずかしいのに、身体は素直に快楽を受け入れようとしているせいでまだ動揺は止まらない。

「……中崎さんてさ、もしかしてこんな事も妄想してた?」
「やっ……それは違いますっ……! だってこんなえっちなのは……!」

 朱に染まった顔で反論するが、彼の優位さは変わらない。

「そっか。ほんとに君は純粋だな。それも今日でおしまいにしてやるよ……」
「……ひっ!? はぁんっ……!」

 下腹部の奥から湧き起こる熱は、彼女の身も心も溶かしていくだけ。

(私、うそ……! こんな事になるなんて……!)
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