ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
第1章 ガラリと変わった世界と解釈
 ここはとあるオフィス街にあるビルの中。その一角に集められた女性達のうち、内勤用の事務服に身を包む黒髪を束ねた女性……中崎咲良はただただ衝撃に打ち震えている。

「リ、リストラ!?」

 そう、咲良達10人の内勤事務者にリストラが言い渡された。

「あの課長、どういう事ですか?!」
「コストカットという事で、君達総務課の事務員を減らすように、上層部からのお達しでな。申し訳ないが、受け入れてほしい」

 世は不景気の真っ只中。賃上げに減税などが叫ばれる中、咲良の勤めている大手の自動車会社もその風を受けている。
 咲良が所属しているのは総務課、内勤なので事務作業がメインだ。それ故に人員削減及びリストラの矛先が真っ先に向かった由縁でもある。

(こないだ勤務管理とかにAI取り入れるなんて言ってたけど、こうなるなんて!)

 だが、リストラが言い渡された以上、咲良達事務員らに拒否権はない。

「課長急すぎませんか?! 普通なら半年くらい前にお達しあるでしょう!」
「再就職先へのあっせんとかはないのですか?!」
「私達、路頭に迷えと?!」

 咲良の周囲にいる先輩事務員らからは怒号が飛び交う。咲良は28歳だがこの中だと年少なので、とてもじゃないが怒号なんて出せない。それに冴えない中年男性の課長はまあまあとなだめ続けるだけ。
 しばらくして課長と同年代位の男性である総務部の部長が姿を見せたが、彼もまた禿げ頭をぺこぺこさせながら謝るだけ。

(どうすればいいの……? これから先、真っ暗じゃない!)

 沸き起こり続ける怒号の中、咲良は拳をぎゅっと握りしめる。
 業を煮やしたのか部長が納得できないなら強硬手段に出る! と半泣きの状態で脅しにかかってきた辺りで事務員達の叫びは消えた。

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