ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 一気に彼の顔が近くなる。視界のほぼすべてを埋め尽くす彼の色気たっぷりな表情はあまりにもまぶしすぎて直視できない。

「ひっ……!」
「恥ずかしがり屋だなぁ。そういう所も可愛い」
「やっ、言わないでください……」
「な、中崎さん……いや、咲良。どうする? 俺と一緒だったら衣食住も保証されているし、毎日妄想以上の事、出来るけど?」

 明らかな挑発だが、衣食住の保証は咲良にとってはメリットしかない。それに相手が相手なので断る選択肢はほぼ無いと言っていいだろう。

「もしその、断ったら……」
「う〜ん、脅すのは良くないと思うんだけど、この本描いてる事、同僚とかに言っちゃおうかな?」
(げっ! それは1番困るやつ!! だめだめだめ! リアバレは死と同じ!)

 にやっと笑う秀介の口角は、あくどさと妖艶さが入り混じっていた。
 
「それはやめてください!! 死んじゃいます!!」
「じゃあ、決まり。だよね?」

 春日先輩は自分の妄想をはるかに超える存在だ。咲良はその事実を叩きつけられたのだった。

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