ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 吐き出された言葉は咲良の脳を簡単に爆発させるほどの威力だった。
 確かにこの美貌だ、ストーカーにあってもおかしくはないとは咲良自身予想してはいたが、実際にあっていると知ると衝撃は殊の外重かった。

「女なのはわかってるんだけどね。なかなかしつこくて……」
「わあ……薔薇以外にも何かされたりしてるんですか!?」
「愛しているとか、そんな手紙が来る。尾行はされてないな……多分されてるかもしれないけど」

 腕組みをして苦笑いを浮かべる秀介。彼の顔つきを見た瞬間、咲良の胸の内で正義心にも母性にも似た感情が沸き起こった。

「先輩、私が守ります!」

 自分でもびっくりするくらいの大声に、咲良はさっと口を両手で覆った。

「咲良?」
「だ、だって、春日先輩に何かあったらって思うと心配です……! 春日先輩の事、放っておけないですよ……!」

 自分の好きな人に何かあったらどうしよう。そんな心配さと不安さが前へ前へと動き出して心臓の鼓動を速くさせる。

「微力かもしれないです。けど」

 秀介は目を点にすると、すぐにふっと口元を緩めた。

「咲良、ありがとうな」

 すると彼の顔が近づいて、唇がふさがれる。温かな感触と甘い香りは咲良の心の中を支配していた不安を一瞬で鎮めてくれた。
 彼の愛を受け止めながら、柔らかくて心地よいのを堪能していると、松原がいたのを咲良は思い出す。

「んむっ! 先輩っ……!」

 慌てて唇を離し、ちらりと松原を見る。彼はにこにこと微笑みを携えたまま。そんな瞳が咲良の羞恥心を更に掻き立てる。

「ひっ人前でこんなのっ……! 恥ずかしいですよ……! あっ松原さんなんかすみません!」
「いえ。春日さんに恋人が出来たのだと思うと、私としては感無量ですよ」
「ああ松原さん。紹介しよう。俺の妻だ」
「ほえ?!」
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