ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 岩のように固まった咲良へ、松原は目をきらきらと輝かせた。

「ご結婚おめでとうございます! それはそれは、素晴らしい……! ああ、早速お祝いの品々をご用意しなければ……!」
「えっ、松原さん?」
「松原さんはいつもあんな感じだから気にしないで大丈夫。後ですっごいのが届くと思うけど」
(いやいやいや! 何が起こるの?! えっともしかして……オードブルとか?!)

 咲良の目の前では松原が顎の下に手を添えて、贈り物を何にするか考えるのに没頭し始めている。そんな彼へ秀介はそっと声を掛けた。

「今はお気持ちだけで大丈夫ですよ。贈り物はまた後日で全然いいんで」
「はっ! 失礼いたしました。ですがなるべくお早めにご準備いたします! それではこちらの花束は処分しておきますね」
「お願いします~」

 松原が去り、再びリビングへ戻り食事に戻ろうとする。しかし咲良の狙い通りにはいかなかった。 
 
「で、咲良。結婚の話、どうする? 君からの意見もちゃんと聞いておかないと」
(わっ! 忘れてた! てかさっき松原さんにはもう言っちゃってるじゃん!)
「お試し、っていうのもアリだとは俺は思うけど」 

 その手があったかと咲良は合点がいく。

「でっでは、そのお試し契約って事でいいですかね? 私はまだまだ先輩について知らないですし」
「嘘つけ知ってるくせに。ん、いいよ。どれくらいにする?」
「そうですね……3か月くらい、はいかがですか?」
「わかった。じゃあ3か月のお試し契約な。俺はクーリングオフするつもりは微塵もないけどね」

 ふふっと笑う秀介を見て、きゅっと胸の奥がきつく締まる感覚を覚える。
 3か月の試用期間が終われば、そのまま籍を入れて本当の妻になってくれてもいいし、お別れしてもいい……と秀介から再度念を押される。
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