ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 この瞬間も咲良は秀介との妄想に入り始めた。とはいっても手をつないだり、肩を寄せ合うだけ。至って健全なものだ。
 その間に秀介は自分の注文を済ませて、先に届いたフライドポテトをつまみながらビールを飲んでいく。
 
「あぁ~っうまい! オペ後のフライドポテトとビールはうまいな……!」
(やっぱりフライドポテト好きなんだ、SNSによく挙げてるもんね。解釈通り……!)
「中崎さんもフライドポテト好きなんだ?」
「はい、すっごい好きです。ここのとマーフィのフライドポテトが特に好きですね……!」

 あ~わかる! と若者らしい気さくな反応を見せる秀介は、どこを切り取っても咲良が妄想してきた通り。このまま時間が止まりますようにと願いながら、彼女はごくごくとビールを飲んでいく。ビールを飲んで酔っ払えば、楓華との辛いやり取りもリストラも忘れられると思ったからだ。

「わ、すんごい飲むな……」
「いや~……それほどでもぉ」

 こうしてビールを飲み、食事を平らげていく間に咲良の意識はだんだんと薄れていった。
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