ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
「おい? 中崎さん? お~い?」
「ふぇふぇふぇ……ふぉふぉ……」
薄れていく理性が最後に聞いたのは、勿論秀介の声だった。
「……はぁ、おぶっていこうか。あ、段ボール……荷物もあるのか」
彼に腕を優しく掴まれ、広い背中に身体が預けられる。彼の陽だまりのような温度が全身に駆け巡ると更に酔いが回った。
一度立ち止まったのは会計の為だろう。咲良はまるでハンモックに揺られているような心地よさを堪能しながら、言葉にならない声を出し続けた。
「飲みすぎだろ……」
「ふぇ?」
咲良はうとうとと目を閉じつつ、彼の指どおりの良い髪がある後頭部へ頬を預ける。
「何でもないよ。とりあえずそれだけ酔ってるならどっかで休んだ方がいいよ。俺んち近いけど……」
「行きます~」
「いや、即答かよ! これまでロクに関わって来なかった男の家だぞ……」
結局、咲良は秀介の自宅へ移動する事となる。荷物は彼が呼んだタクシー運転手や秀介が手伝い、運んでくれた。
千鳥足のまま彼のベッドに身を横たわせたが、理性が蒸発しているこの状況下では羞恥心や遠慮といった感情は全く出てこない。
「中崎さん、何かあったら言ってよ」
ここで部屋から去ろうとする秀介の背中に、咲良は抱き着いた。
夢の世界に辿り着いている咲良の視界上だと秀介の背中ではなく、樹齢数百年クラスの桜の大樹が映し出されていたのだが。
「っおい!」
よろけふためく秀介に咲良は気が付くそぶりも見せず、ただ頬を彼の腰からお尻の付近に当てる。
「ああ、あったかい……桜の神様……」
「いや、中崎さんが抱き着いてるのは」
「あぁ~……神様~どうか私に衣食住と……あっ出来たら春日先輩とデートかハグがしたい、です……」
「は? お、俺と?」
咲良視点では、願いをかなえる桜の大樹に抱き着いて、秘めたる願いを呟いていたつもりだった。しかし秀介視点だとそうではない。
「……中崎さん、もしかして誘ってる?」
彼の問いは咲良には届いていない。あくまで桜の大樹に寄り添っているだけだ。
「あぁ~……」
「お――い、お――い……?」
秀介が振り返った途端体勢が崩れる。ベッドの上で彼が咲良を押し倒したような格好となると、咲良の目の前には秀介の顔がでかでかと広がった。
なお夢の世界にいる彼女には全く認識できていない。そんなのほほんとした彼女を見た秀介の身体の中で理性の糸がぷつりと切れた。
「……やっぱ誘ってきているだろ……!」
「……っ?! あっ……!」
そのまま秀介は逃げるようにして退散していったのだが、咲良がそれに気が付くはずもなく。
「ん~熱い……」
酔いが熱をもたらし、全身を覆う。彼女は勝手に服を脱いでベッドの上に寝転がって深い暗闇の世界へと溺れていった。
「ふぇふぇふぇ……ふぉふぉ……」
薄れていく理性が最後に聞いたのは、勿論秀介の声だった。
「……はぁ、おぶっていこうか。あ、段ボール……荷物もあるのか」
彼に腕を優しく掴まれ、広い背中に身体が預けられる。彼の陽だまりのような温度が全身に駆け巡ると更に酔いが回った。
一度立ち止まったのは会計の為だろう。咲良はまるでハンモックに揺られているような心地よさを堪能しながら、言葉にならない声を出し続けた。
「飲みすぎだろ……」
「ふぇ?」
咲良はうとうとと目を閉じつつ、彼の指どおりの良い髪がある後頭部へ頬を預ける。
「何でもないよ。とりあえずそれだけ酔ってるならどっかで休んだ方がいいよ。俺んち近いけど……」
「行きます~」
「いや、即答かよ! これまでロクに関わって来なかった男の家だぞ……」
結局、咲良は秀介の自宅へ移動する事となる。荷物は彼が呼んだタクシー運転手や秀介が手伝い、運んでくれた。
千鳥足のまま彼のベッドに身を横たわせたが、理性が蒸発しているこの状況下では羞恥心や遠慮といった感情は全く出てこない。
「中崎さん、何かあったら言ってよ」
ここで部屋から去ろうとする秀介の背中に、咲良は抱き着いた。
夢の世界に辿り着いている咲良の視界上だと秀介の背中ではなく、樹齢数百年クラスの桜の大樹が映し出されていたのだが。
「っおい!」
よろけふためく秀介に咲良は気が付くそぶりも見せず、ただ頬を彼の腰からお尻の付近に当てる。
「ああ、あったかい……桜の神様……」
「いや、中崎さんが抱き着いてるのは」
「あぁ~……神様~どうか私に衣食住と……あっ出来たら春日先輩とデートかハグがしたい、です……」
「は? お、俺と?」
咲良視点では、願いをかなえる桜の大樹に抱き着いて、秘めたる願いを呟いていたつもりだった。しかし秀介視点だとそうではない。
「……中崎さん、もしかして誘ってる?」
彼の問いは咲良には届いていない。あくまで桜の大樹に寄り添っているだけだ。
「あぁ~……」
「お――い、お――い……?」
秀介が振り返った途端体勢が崩れる。ベッドの上で彼が咲良を押し倒したような格好となると、咲良の目の前には秀介の顔がでかでかと広がった。
なお夢の世界にいる彼女には全く認識できていない。そんなのほほんとした彼女を見た秀介の身体の中で理性の糸がぷつりと切れた。
「……やっぱ誘ってきているだろ……!」
「……っ?! あっ……!」
そのまま秀介は逃げるようにして退散していったのだが、咲良がそれに気が付くはずもなく。
「ん~熱い……」
酔いが熱をもたらし、全身を覆う。彼女は勝手に服を脱いでベッドの上に寝転がって深い暗闇の世界へと溺れていった。