激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
カティアの陰謀
ビンセントがルチアの滞在する
離宮の客室へ向かったことは、
侍従のひとりが
「皇帝陛下が……あちらに……!」
と口を滑らせたことで
瞬く間に宮廷中へ広がった。
「え!? 皇帝陛下が“あの”ルチア王女のところに?」
「でもルチア王女は帰り支度してたって聞いたんだけど!」
「やっぱり陛下の心はあの肝の座った姫君に……!」
ざわつく侍従、興奮する侍女、焦る政治家たち。
大広間で聞こえそうなほど
ヒソヒソ声が充満していた。
当のビンセントは…
実は誰より動揺していた。
部屋を出た後も、
胸がドクドクとうるさかった。
「……何を言ってるんだ、俺は……?」
「“帰るな”なんて……まるで“そばにいろ”って言ってるみたいじゃないか……!」
鏡を覗き込み、
真っ赤になった自分の耳に気づく。
「馬鹿か俺は……! だけど一度口にしてしまったら、余計止まらん……!」
彼は心の中で完全に恋を自覚し、
勝手に焦り始めていた。
ルチアもルチアで…
部屋のベッドに座りながら、
頬を押さえて ひとり悶絶 していた。
「……なんで、帰るって言わなかったのよ、私」
先ほどの自分の言葉を思い出し、
顔から火が出そう。
「落ち着きなさい、ルチア。
あんな激重シスコン男を相手にするなんてあり得ない。
でも……でも……なんか真っ直ぐに話してきて……」
心がふわっと温かくなる。
「……ダメダメ! これは一時の情に流されてるだけ!」
と必死に自分に言い聞かせるも、
胸の高鳴りはひとつも静まらなかった。
離宮の客室へ向かったことは、
侍従のひとりが
「皇帝陛下が……あちらに……!」
と口を滑らせたことで
瞬く間に宮廷中へ広がった。
「え!? 皇帝陛下が“あの”ルチア王女のところに?」
「でもルチア王女は帰り支度してたって聞いたんだけど!」
「やっぱり陛下の心はあの肝の座った姫君に……!」
ざわつく侍従、興奮する侍女、焦る政治家たち。
大広間で聞こえそうなほど
ヒソヒソ声が充満していた。
当のビンセントは…
実は誰より動揺していた。
部屋を出た後も、
胸がドクドクとうるさかった。
「……何を言ってるんだ、俺は……?」
「“帰るな”なんて……まるで“そばにいろ”って言ってるみたいじゃないか……!」
鏡を覗き込み、
真っ赤になった自分の耳に気づく。
「馬鹿か俺は……! だけど一度口にしてしまったら、余計止まらん……!」
彼は心の中で完全に恋を自覚し、
勝手に焦り始めていた。
ルチアもルチアで…
部屋のベッドに座りながら、
頬を押さえて ひとり悶絶 していた。
「……なんで、帰るって言わなかったのよ、私」
先ほどの自分の言葉を思い出し、
顔から火が出そう。
「落ち着きなさい、ルチア。
あんな激重シスコン男を相手にするなんてあり得ない。
でも……でも……なんか真っ直ぐに話してきて……」
心がふわっと温かくなる。
「……ダメダメ! これは一時の情に流されてるだけ!」
と必死に自分に言い聞かせるも、
胸の高鳴りはひとつも静まらなかった。