気まぐれヒーロー3
「マジで並ぶヤツなんていないくらい、白鷹さんの技術はずば抜けてた。無口なのは変わらなかったけど、ちゃんとみんなを引っ張ってくれてたんだ。だけど……」
どうしてだろう。
どうして、ジローさんの“過去”に近づけば近づくほど、胸の奥がぎゅっと痛むんだろう。
この苦しさは、何?
「突然“事件”が起きて、うちのバスケ部は無期限の活動停止。そして──白鷹さんは全部の責任を押しつけられて、部を辞めた。……いや、辞めたっていうより“そうせざるを得なかった”って言った方が、正しいのかもしれないけど」
かっちゃんの口から落ちる一語一語が、足に重しのように絡みついて、身動きできなくなる。
どう受け止めたらいいのかわからない。
ただ、胸が冷たくなるだけ。
ジローさんが歩いてきた道は、どうしてこんなにも──孤独と喪失ばかりなんだろう。
どうして彼の頭上では、太陽が輝かないんだろう。
どうして……奪われるばかりなんだろう。
だからこそ。
彼の、壊れそうなほど繊細な優しさに触れると、泣きたくなるんだ。
「克也」
ジローさんのことを考えていた時、ふいにかっちゃんの名前を呼ぶ声がした。
反射的に顔を上げると、風がひゅっと頬をかすめる。
勢いよく飛んできたバスケットボールが、かっちゃんめがけて一直線。
「わっ!」
彼は小さな悲鳴とともに、顔面にぶつかるギリギリで両手でボールを受け止めた。
バシッ、と乾いた音が響く。
私はただ、呆然とその一部始終を見ているしかなく。
「そこ、どけ」
ボールを投げつけた張本人は、無愛想そのものの声でそれだけ言い放った。
視線が吸い寄せられるように、その人へ向く。
ベンチの正面に立ち、私たちを見下ろすのは──
うっすらと汗を滲ませ、軽く乱れた呼吸を整える、ハイジだった。