気まぐれヒーロー3


こんなにも、一秒って長かった?


こんなにも、リングまでの距離って遠かった?


魔法でもかけられたかのように。

ゆっくりと、時が歩んでいく。


固唾を飲んで見守るみんなの思いを抱えて、ボールは……食らいついた。


ゴールへ。


……入った──。



そう思ったのも束の間。


次の瞬間にはそれも打ち砕かれ、



「あっ、!」



ガコン、と。
金属質を叩く堅い音が空気を震わす。


そう。

全員の期待と不安を載せた重い一球は、リングに弾かれ、跳ね上がり、見当違いの方向へ落ちていった。



「あ~あ、アカンかったぁ~」



周囲の緊張なんてどこ吹く風の、ふざけた調子のケイジくんの声。


……外れた?

なのに、彼のその横顔には悔しさも落胆も何もなくて。


それよりも、視線の先は──。



「ってことで、引き分けや。延長戦……っていきたいとこやけど。──ハイジ」



赤髪の彼が、視線をゆらりと流す。


片割れへ。

口を閉ざしたままの、アイツへ。



「今回はお前の勝ちってことでえーわ。俺は引く」



その言葉に、私はぼんやりとだけど掴みかけたものがあった。


彼の真意。


そして。



「お前……なんでわざと外した」



重い口を開いたのは、ハイジ。



「え、わざとって何が?」

「とぼけんじゃねえ。はなっから入れる気なかったんだろ」



白々しくきょとんとするケイジくんに、ハイジの眉間の皺が深まっていく。


私も……薄々感づいていた。

ケイジくんは、勝つつもりなんてなかったんじゃないかって。



「だってさぁ……」



口元に不穏な笑みを浮かべ、凄むハイジにも一歩も退かず。

ケイジくんは、王手をかける。



「ハイジ、本気なんやもん」

「!!」



ぶつけられた一言に、ハイジの目が大きく開く。



ああ──やっぱり。


やっぱり、そうだった。


彼は……ケイジくんは、試してたんだ。


ハイジを。



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