ロリータ趣味を秘密にする代わりに、学校一イケメンの彼女になりました。

放課後の教室は、ほの暗い夕日の光に包まれていた。机の上には教科書とノート、そして昨日湊に言われた「俺の彼女になって」という言葉の重みがずっしりと残っている。

（彼女って、何すればいいの……？）

小さく心の中で呟き、手のひらで顔を覆う。隣に湊が座っているのに、どう振る舞えばいいのか、全くわからなかった。放課後、一緒に帰る――それだけでもドキドキなのに、私はまだ「彼女」としての自覚がない。

「美羽、考え事？」

湊の声にびくっとして顔を上げる。彼は少し首をかしげ、優しく笑っている。優しいけれど、視線はしっかり私を見つめてくる。

「う、うん……その……」

口ごもる私に、湊は手を伸ばしてそっと私の手を握る。小さく温かくて、鼓動が一瞬で早くなる。

「俺の彼女なら……美羽がやりたいことを、俺に言ってくれればいいんだよ」

その言葉に、少しほっとする。でも、まだ漠然としていて、どう返せばいいのかわからない。

「でも……何をすれば、彼女って言えるの……？」

小さな声で問いかけると、湊は少し微笑んでから、顔を近づける。

「そんなに難しく考えなくていい。隣にいてくれるだけで、俺は嬉しい」

胸の奥がぎゅっと熱くなる。言葉だけでこんなに胸が苦しくなるなんて……。

「そ、そう……？」

「もちろん。だから、無理に何かやろうとしなくていいんだ」

その瞬間、心の中で少しだけ勇気が湧く。私は湊の彼女になる――でも、それは特別なことをすることじゃなくて、ただ彼の隣にいること。ちょっと恥ずかしいけど、心が温かくなる瞬間だった。

夕日の光が教室をオレンジ色に染め、手をつないだままの二人は、少しずつ甘くて初々しい「彼女生活」の第一歩を踏み出していた。