星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
 コーヒーを飲むと、氷が溶けて味がぼけていた。手に持ったコップは結露していて、テーブルにぽつぽつと水滴を落とす。
 彼もまたコーヒーを飲み、顔をしかめた。
「このコーヒー、いまいちですね……そうだ!」
 なにか閃いたかのように、絃斗は目を輝かせた。

「今日のお礼にコーヒーをプレゼントします!」
「いいよ、そんなの。道具もないし」
「ダメです、きちんとお礼させてください」
 きりっと言い切る絃斗に、詩季は戸惑いながら頷いた。



 詩季は再び車を走らせ、駅前の駐車場に車を止めた。
 駅ビルの地下にある食品売り場に着いた瞬間、おいしそうな匂いが鼻孔をくすぐる。
 ざわざわと騒がしい中、お惣菜やお弁当コーナーを抜けた先、洋菓子コーナーの近くにコーヒー豆のショップがあり、香ばしい香りが漂っている。

 彼は豆が入ったガラスケースを見て、あ、と小さく声を上げた。
「クイーンワイニーがある!」
「珍しいの?」
「おいしいけど生産量が少ないんです。最近はコーヒー豆が高騰していて、なおさら手に入りにくくて」

 詩季は値段を見て驚いた。ほかのコーヒー豆の三倍の値段がついていて、この前見た国産黒毛和牛より高い。
 彼は自分用と詩季用に二百グラムずつと、彼女のためのコーヒー器具を買った。
 店員が袋とは別にチラシを差し出した。

「噴水広場のイベントで露店を出しているんです。試飲会もやってますから、ぜひ」
 彼は礼を言って受け取り、折りたたんでポケットに入れた。
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