星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「お邪魔します」
 遠慮がちな女性の声がして振り返ると、美しい女性がいた。長い黒髪が彼女の白い肌を縁取り、大きな目が詩季を見たあと、絃斗を見る。

「絃斗、ここにいたのね!」
真理華(まりか)さん!?」
 絃斗はまた驚きで目を丸くした。
霧谷(きりたに)さん、そこにハープありますから」
 マネージャーと呼ばれた男が真理華に声をかける。

「失礼しますね」
 彼女は詩季に声をかけて入室し、ハープを重そうに持った。華奢な彼女には似つかわしくない大きさだった。
 きっと彼女が初恋の人だ。根拠もなく詩季は確信した。初恋で、現在の恋人だ。でなければマネージャーと一緒に来るわけがない。

「さ、行きますよ」
 男は絃斗の腕を引っ張る。
「腕はやめて!」
 絃斗が叫ぶ。

「じゃあちゃんと歩いてください」
「詩季さん!」
 絃斗が助けを求めるように叫ぶ。
 詩季はまっすぐに絃斗を見た。

「夕方の河原にいたのは私だったの」
「え?」
「私があなたに暴言を吐いたの。吟遊詩人って」
 絃斗は驚いて彼女を見つめる。
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