星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「何時に家を出るんですか?」
「遅番だから、十一時くらいに」
 洗い物を終えて干していた彼の服を確認すると、なんとか乾いていた。
 畳んで、家にあった紙袋にまとめて彼に渡す。

「ありがとうございます」
 彼はにこっと笑った。
 詩季は笑顔を返そうと目を細めた。
 絃斗はけげんそうに少し首をかしげた。

「なんだか悲しそう」
「そんなことないわ」
 無理に笑顔を作ると、納得しがたい様子だったが、絃斗は追及してこなかった。

「そういえば、連絡先を……」
 インターホンが鳴り、絃斗が言葉を切った。詩季の心臓が、どきん、と大きく脈打つ。

「こんな時間にお客さん?」
 絃斗が首をかしげる。
 ようやく八時になろうとしている頃だった。
 モニターを見ることもなく、詩季はダイニングから続く玄関を開けた。

「絃斗さん! やっと見つけた!」
 男がずかずかと入って来た。
「マネージャー、なんでここに……」
「私が連絡したの。謝礼をくれるっていうから」
 絃斗は目を丸くして詩季を見た。

「嘘でしょ、そんなの嘘です!」
 男に腕を掴まれ、絃斗は言う。
< 37 / 53 >

この作品をシェア

pagetop