星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
 バイヤーだった元彼はいつも忙しくしていた。慌ただしくデートして急いで帰るか朝は目が覚めたらもういないか、どちらかだった。
 なのに、見知らぬ彼とこんなふうにゆったり過ごす日が来るなんて。

 改めて見る絃斗はかなり整った顔立ちだ。ぱっちりした目は優しげ。ふわふわとパーマのかかった髪は茶色く明るめだが、重めに作られた前髪が彼の幼さとかわいらしさを強調しているように見えた。体の線は全体的に細く、それもまた若さに拍車をかけている。

「何歳なの?」
「三十二です」

「三つ上!? とてもそうは見えないけど」
「よく言われます」
 はにかむ彼に、褒めてないんだけどな、とは口にしなかった。若く見えてうらやましいと妬みつつコーヒーを飲み、眉を上げた。

「これ、うちにあったやつよね? いつもよりおいしい」
「良かったです」
 晴れやかな笑みにどきっとした。美形の破壊力、と思いながらまたコーヒーを口に含む。

「ワンドリップコーヒーでもひと手間かける違うんですよ。最初にお湯を入れて蒸らしてからお湯を注ぐんです」
 詩季はいつもインスタントで、紙製の簡易ドリッパーがセットになったワンドリップコーヒーはたまに買う程度だ。

「で、なんで家にいるの?」
 たずねると、絃斗はぎくっと身を震わせた。
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