星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「昨晩……声をかけられまして」
「私からナンパした、と」
「ナンパといいますか——」
 彼は妙にもじもじしていた。童顔のイケメンがそうしていると、妙にかわいい。

「ハープを返してもらえなかったものですから」
「ハープって、吟遊詩人が持ってるやつ?」
「また言われた……」
 彼は落胆したようにうつむく。

「なんかごめん。それで?」
「僕のことをなぜかお星様って呼んで、歌うまで返さないってハープを持って行っちゃって、でも家に着いたらすぐに寝ちゃって。僕が出て行くと鍵をしないままになっちゃうし、部屋をお借りして僕も寝ました」

 自分がそんなことをする人間だとは思わなかった。
 詩季が眉間にしわを寄せると、彼は慌てて付け足す。

「何もしてませんから! そんな勇気ないです」
「わかってる。怒ってないよ」
 人生初の失態だ。社会人になってからずっと独り暮らしだが、今までお持ち帰りをするどころかされたこともない。

「お世話になったお礼にハープを弾きます」
 席を立つ彼を慌てて止めた。
「ご近所迷惑になっちゃう!」
「迷惑……」
 しょんぼりと肩を落とす彼の姿が、妙に胸に突き刺さる。が、ここで彼に弾かせるわけにはいかない。

「カラオケ店に行きましょう、そこなら防音も効いてるから!」
 詩季が言うと、彼は弱々しく笑った。
< 7 / 53 >

この作品をシェア

pagetop