ほっとけないよ
ヤマシロくんは、
化学の時間もずっと実験台に突っ伏して寝ていた -

「ヤマシロくん、教室帰ろ」

俺が、寝ているヤマシロくんをそっと揺り起こすと、
パグが一言。
「だれ……?」
「ウドウな。良い加減覚えろよ」

俺たちがもたもたしているうちに、クラスメイトたちは実験器具を洗って片づけ、さっさと化学室を出ていく。

「ヤマシロくん、
今日の実験、むずかしかったよ。
あとで俺のノート見せ、」
窓から入ってきた太陽のにおいのいたずらなそよ風で、
さくら花のように舞う、
ルーズリーフ -

「みんながノート取ってくれたの?」
「……」
「ヤマシロくん、
きみ、人生がイージーモードだって言われない?」
「?」

この美しいクラスメイトが、
ちょっとだけ憎らしくなった瞬間だった。
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