月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 『生きていくのが苦痛になるほどの呪いをかけろ』

 そう命じ、魔獣による攻撃に見せかけて目的を達成。呪われた王族など王都には必要ないと父王を説得し、魔獣が蠢く北の辺境にレオナールを追放した。
 願いが叶ったそのとき、胸の奥でなにかが大きく弾けた。
 それは罪悪感ではなく、安堵だった。やっとだ、と。
 その呪術師も宰相も口を封じ、ルーベンが呪いを仕向けたと知る者はいない。あとは自分の思うままだ。
 そう思っていたというのに――。

 「ぐっ……!」

 歯を噛みしめる。口の中に鉄の味が広がる。
 悔しい。
 これほど屈辱を感じたことはない。命を救われた恩など、なんの慰めにもならない。
 あれではまるで、自分が弟の庇護を受ける子どものようではないか。

 「陛下……」

 そっと近づいたバネッサが声をかける。
 だが、その声音にも怯えが混じっているのがわかる。彼女も見ていたのだ。あの〝夜の王〟の姿を。どんな宝石よりも気高く、どんな祈りよりも美しいエミリアの輝きを。

 「うるさいっ!」

 ルーベンは怒鳴った。
 バネッサが肩を震わせ、後ずさる。
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