月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「お前は……お前はエミリアのように聖女でもなければ、癒しの力も持たぬではないか!」

 言葉が鋭く空気を裂いた。
 バネッサの瞳が大きく見開かれ、唇が震える。

 「……陛下、私は」
 「黙れ!」

 ルーベンは立ち上がりかけ、足に残る痛みの幻に呻いた。
 エミリアの癒しの光が消したはずの痛みが、まるで呪いのように蘇る。
 罰なのか。
 神殿を退け、聖女を追放した報いなのか。
 己の手で、王の座を汚してきた報いなのか。
 その思いが頭をよぎった瞬間、心の奥からなにかが崩れ落ちる音がした。
 ルーベンは頭を抱え、ただ小さく呻いた。

 「私は……間違ってなどいない……。あいつと、あの女が、悪いのだ……」

 言葉は弱々しく、誰に向けたものでもなかった。
 バネッサはその言葉を聞きながら、静かに顔を伏せる。
 その頬を伝うものが涙なのか、それとも失望なのか、ルーベンにはたしかめる気力すら残っていなかった。
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