月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 しかし次の瞬間、ひときわ巨大な魔獣が闇を裂いて現れた。獣の体は黒い霧をまとい、眼は燃えるように赤い。
 その咆哮に空が震えた。
 レオナールは歯を食いしばり、杖を掲げた。

 「ブラスト!」

 光が再び走る。だが、その光が魔獣に届くより早く、漆黒の瘴気が逆流するように彼の体を包み込んだ。
 熱い。
 息ができない。
 まるで体の内側からなにかが焼けるような痛みだった。
 視界が白く霞み、世界が遠のいていく。誰かの叫びが聞こえた。騎士たちの魔法が次々と放たれ、やがて魔獣が崩れ落ちた。
 瘴気も消えたが、そこにいたのはもはや少年ではなかった。
 髪は白く、皮膚は皺に覆われ、指先まで老いが刻まれている。衣の袖から覗くその手は、老人のように枯れていた。
 騎士たちは言葉を失う。誰もが目の前の現実を信じられなかった。
 気を失ったレオナールは、急ぎ宮殿へと運ばれた。
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