月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 ***

 「……これは、呪いだ」

 王のアルフォンスは、玉座の間でその姿を見た瞬間、声を失った。
 人払いを命じ、扉を閉ざす。
 ほどなくして聖女であり王妃である、レオナールの母が駆け込んできた。

 「レオナール! なんということを……!」

 その声は震えていた。
 彼女は両手をかざし、息子の体に祈りの光を注ぐ。
 眩い光が部屋を満たし、老いた皮膚がわずかに張りを取り戻す。皺が薄れ、髪に銀の輝きが戻る。
 しかし完全ではなかった。何度祈っても、何度唱えても、呪いの根は消えない。

 「だめ……奥深くに、なにかが棘のように刺さっているの……」

 王妃は蒼ざめながら呟いた。その額には冷たい汗が滲んでいる。
 アルフォンスは妻の肩を抱き、苦しげに顔を歪める。

 「もうよい、無理をするな」
 「でも、この子は……この子だけは、救わなければ……!」

 光がさらに強まる。
 しかしその瞬間、王妃の体がぐらりと傾いた。
 レオナールの名を呼びながら、彼女は王の腕の中に崩れ落ちた。
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