月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 遠くの山脈の向こうに、薄く王都の方角が霞んで見える。その奥で蠢くものはなんなのか。

 「王都でなにかが起ころうとしているのかもしれないな」

 その言葉にエリオットは目を見開き、そして小さくうなずいた。

 「ああ。私もそう思う」

 ふたりの間に再び沈黙が落ちた。
 しかし今度のそれは、先ほどまでの懐かしい沈黙ではない。嵐の前の静けさといったらいいだろうか。そんな冷たい予感が、ふたりの間に舞い降りた。
 そもそものはじまりは、神殿との繋がりを断ち切ったことによるものだろう。千年にわたって捧げてきた祈りを軽んじたから。

 「今日ここへ来たのはほかでもない。私と一緒に行ってほしいところがあるんだ」

 エリオットはそう言って、レオナールを真っすぐに見つめた。
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